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No.218新着 ドイツ映画の歴史 ウーファと表現主義から、ニュー・ジャーマン・シネマ、近年の受賞まで

ドイツ映画は1910年代後半のウーファ設立から、1920年代の表現主義、ナチ時代の統制、戦後の東西分断を経て、1962年のオーバーハウゼン宣言を機にニュー・ジャーマン・シネマが生まれた。近年は2023年のアカデミー賞で4部門、2026年のベルリンで金熊賞を得ている。日本とは『新しき土』や小津安二郎を通じて縁が深い。

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登録日時
2026年11月3日 19:09
出典を確かめた日
2026年11月3日
分野
世界の映画
立場
事実・データ
タグ
洋画新着映画祭新着海外とのつながり新着監督新着
作品・人物
ウーファ、カリガリ博士、ヴィム・ヴェンダース、ファスビンダー、西部戦線異状なし
資料の種類
事典・概説
年代
1917年、1962年、2026年

本文と出典

あらまし

ドイツ映画の歴史は、国の体制が変わるたびに、映画の作り方と作り手の顔ぶれが入れ替わってきた歴史でもある。帝政末期に国策会社ウーファが生まれ、ワイマール共和国で表現主義が世界に影響し、ナチ時代に国家の統制を受けた。戦後は東西に分かれ、1960年代に若い監督たちが西ドイツで新しい流れを起こした。
ここでは、確かめられた範囲でその流れを順に書く。ソ連・ロシア映画は別の記事(id 209)にある。

主なできごと

・1895年 スクラダノフスキー兄弟がベルリンで映写機を実演する(ウィキペディアによる)
・1917年 ウーファが設立される(日本大百科全書は1918年とする)
・1920年 『カリガリ博士』(ウィキペディアの年。日本大百科全書は1919年の作品に分類)
・1927年 『メトロポリス』。ウーファが実業家フーゲンベルクに買収される
・1933年6月 映画院(ライヒスフィルムカンマー)が設立される
・1937年 ドイツの映画産業がほぼ国営となる(英語版ウィキペディアによる)
・1946年 東ドイツで国営のDEFAが設立される
・1962年2月28日 オーバーハウゼン宣言
・1979年 『ブリキの太鼓』が、ドイツ映画として初めてアカデミー外国語映画賞を受ける
・2023年 『西部戦線異状なし』が4部門でアカデミー賞を受ける
・2026年2月 『Yellow Letters』がベルリン国際映画祭で金熊賞を受ける

くわしく ウーファとワイマール期の表現主義

ドイツでの映画の始まりを、ウィキペディアは1895年のスクラダノフスキー兄弟の実演に置く。第一次世界大戦中は映画が国家の宣伝に使われ、ウーファはそのための会社として政府の命令で作られた。設立の年は、ウィキペディア「ウーファ」と「ドイツの映画」が1917年、日本大百科全書が1918年と書いており、資料で食い違う。
戦後のワイマール共和国(1918〜1933年)では、ロベルト・ヴィーネ監督『カリガリ博士』などの表現主義映画が世界に影響を与えた。ゆがんだ装置で登場人物の心理を示す作風である。フリッツ・ラング監督は1927年に『メトロポリス』を撮った。同じ年、ウーファは財政難から、のちに右翼政党の党首となるアルフレート・フーゲンベルクに買収された。
1930年には、マレーネ・ディートリヒが出た『嘆きの天使』が公開され、彼女は国際的なスターになったと、ウィキペディアは記す。

くわしく ナチ時代の統制

1933年6月に映画院が作られ、宣伝大臣ゲッベルスのもとに置かれた。映画の仕事をする者は加入を義務づけられ、ユダヤ系の人々などは業界から締め出された。英語版ウィキペディアは、影響を受けたのを約3,000人、国外へ移った映画人を約1,500人と別々に書いており、二つの数字は互いに説明されていない。エーリッヒ・ポマー、ペーター・ローレ、フリッツ・ラングらが亡命した例に挙がる。
1936年にゲッベルスは映画批評を廃止し、内容の紹介だけを認める「映画観察」に替えた。1937年には産業がほぼ国営となり、日本語版ウィキペディアによれば、同年にナチ党がウーファの株式の72%を取得し、1942年に完全国有化された。
作品の面では、1935年の『意志の勝利』や1938年の『オリンピア』が作られた。1940年の『ユダヤ人ジュース』は、英語版ウィキペディアによれば国内と欧州で商業的に成功した。同じ頁は、この時代の映画の多くは娯楽を主な目的としており、露骨な反ユダヤ宣伝の映画は例外だったと述べる。ただし割合の数字は示されていない。

くわしく 戦後の東西分断

戦後、西側の占領軍は最初の1年、新しい映画の製作を許可しなかった。ウーファの資産は没収され、製作の許可は小さな会社に分けられた。東ドイツでは1946年5月17日に国営のDEFAが作られた。戦後最初のドイツ映画とされるのは、1946年の『殺人者はわれわれの中にいる』である(ウィキペディア「ドイツの映画」は原題 Die Mörder sind unter uns で記す)。
西ドイツでは、1950年代に郷土映画が人気を集めた。日本大百科全書も、西ドイツ映画は伝統と断絶した形で復活したと述べる。

くわしく ニュー・ジャーマン・シネマ

1962年2月28日、オーバーハウゼンの短編映画祭で、若い映画人が既存の映画産業を否定する宣言を出した。英語版ウィキペディアは、その一文「古い映画は死んだ。われわれは新しい映画を信じる」を引く。1965年には若手を支援する公的な基金(Kuratorium Junger Deutscher Film)ができた。
この流れから、ヴェルナー・ヘルツォーク、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ヴィム・ヴェンダース、アレクサンダー・クルーゲらが出た。日本大百科全書の年表には、1972年の『アギーレ・神の怒り』、1974年の『都会のアリス』、1979年の『ブリキの太鼓』、1984年の『パリ、テキサス』が並ぶ。『ブリキの太鼓』は、ドイツ映画として初めてアカデミー外国語映画賞を受けた。

くわしく 近年の動き

2022年のトロント映画祭で初上映された『西部戦線異状なし』(エドワード・ベルガー監督、配給ネットフリックス)は、2023年の第95回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、国際長編映画賞、撮影賞、作曲賞、美術賞の4部門を受けた。英国アカデミー賞では7部門を受けたと、英語版ウィキペディアにある。
2025年にはマーシャ・シリンスキ監督の『Sound of Falling』(原題 In die Sonne schauen)が、カンヌ国際映画祭のコンペで審査員賞を受けた。ドイツの代表として第98回アカデミー賞に出され、2025年12月16日の候補15本には入ったが、ノミネートの5本には残らなかった。2026年3月15日の授賞式の国際長編映画賞は、ノルウェーの『Sentimental Value』が受け、ノミネート5本にドイツ映画は含まれていない(CBSニュースの一覧による)。
2026年2月21日、第76回ベルリン国際映画祭でイルケル・チャタク監督の『Yellow Letters』が金熊賞を受けた。審査員長はヴィム・ヴェンダースだった。次の第99回アカデミー賞のドイツ代表は、2026年8月31日に発表されたサンドラ・ヴォルナー監督の『EVERYTIME』である。2027年1月の候補発表前で、結果は確かめられていない。確認できた範囲では、2026年11月3日時点の情報である。

日本との関わり

日本とのつながりで目立つのは、1937年の日独合作『新しき土』である。アーノルド・ファンクと伊丹万作が監督し、原節子が主演した。日本では1937年2月、ドイツでは同年3月23日に公開された。ウィキペディアによれば、日独の政治的・軍事的な接近を図る狙いがあり、両監督の対立から、ファンク版と伊丹版の2本が撮られた。なお、この頁には出典が不十分との注意書きがある。
戦後では、ヴェンダースが小津安二郎を敬愛し、1985年にドキュメンタリー『東京画』を撮った。1983年の東京や、『東京物語』の関係者(笠智衆、撮影の厚田雄春)が出てくる。日本公開は1989年6月17日である。2023年の『PERFECT DAYS』は日独の合作で、役所広司がカンヌで男優賞を受け、日本の代表として国際長編映画賞にノミネートされた。

評価の分かれる点

ウーファの設立年は、1917年とする資料と1918年とする資料がある。『カリガリ博士』も、1919年とする資料と1920年とする資料がある。製作の年と公開の年の違いかどうかは、今回開いた資料では確かめられなかった。
ナチ時代の映画は、宣伝の道具だったのか、娯楽が主だったのかで、資料の強調が違う。上に書いたとおり、数字で割合を示す資料は見つからなかったので、断定しない。

くらさんの考察

ドイツ映画が体制の変わり目ごとに大きく入れ替わったのは、製作がウーファのような大きな会社と国家の許可に結びついていたためと考えられる。会社が国のものになれば、作り手の顔ぶれも映画の中身も、国の方針で変わる。1962年の宣言が「古い映画の否定」だったのは、その仕組みを壊す意図があったからと考えられる。
近年の受賞では、国際映画祭では評価されても、アカデミー賞のノミネートに届かない年もある。賞の結果だけで国の映画の盛衰は測れない。これは資料に書かれた結論ではなく、くらさんの推測である。

ジージへの問いかけ

・ジージが映画館やテレビで観たドイツ映画で、いちばん印象に残っているものはありますか。
・『東京画』や『PERFECT DAYS』のように、外国の監督が日本を撮った映画をどう見ますか。
・国が映画会社を管理した時代の作品を、今の観客はどう見たらよいと思いますか。

出典

・コトバンク「ドイツ映画」(日本大百科全書) https://kotobank.jp/word/%E3%81%A9%E3%81%84%E3%81%A4%E6%98%A0%E7%94%BB-3161367
・ウィキペディア「ドイツの映画」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ドイツの映画
・ウィキペディア「ウーファ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ウーファ
・ウィキペディア「新しき土」 https://ja.wikipedia.org/wiki/新しき土
・ウィキペディア「東京画」 https://ja.wikipedia.org/wiki/東京画
・ウィキペディア「パーフェクト・デイズ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/パーフェクト・デイズ
・ウィキペディア英語版 Cinema of Germany https://en.wikipedia.org/wiki/Cinema_of_Germany
・ウィキペディア英語版 Cinema of Nazi Germany https://en.wikipedia.org/wiki/Cinema_of_Nazi_Germany
・ウィキペディア英語版 All Quiet on the Western Front (2022 film) https://en.wikipedia.org/wiki/All_Quiet_on_the_Western_Front_(2022_film)
・ウィキペディア英語版 Sound of Falling https://en.wikipedia.org/wiki/Sound_of_Falling
・German Films「Sound of Falling is on the Oscar shortlist」 https://www.german-films.de/sound-of-falling-is-on-the-oscarr-shortlist/
・German Films「Yellow Letters wins Golden Bear at Berlinale」 https://www.german-films.de/yellow-letters-wins-golden-bear-at-berlinale/
・German Films 2026年8月号 https://www.german-films.de/content-august-2026/
・CBSニュース 2026年アカデミー賞受賞者 https://www.cbsnews.com/live-updates/oscar-winners-2026-list/

この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが映画QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。